連携システムへの取り組み

連携システムへの取り組み

安心して暮らせる町づくり

足寄町長安久津勝彦

初めて町長になった頃の状況は

私が町長選挙にでた平成15年の頃は足寄町立特別養護老人ホームに入所を希望している人は40~50人位だったと思います。いつも満床状態なので、特別養護老人ホームを増やせばいいと考えていたのですが、足寄町の人口数では増床はできないという総量規制に制限されていたと思います。現実は、当時の芽室町長が政策懇談会などで、『総量規制はあるものの十勝管内全体として、特別養護老人ホームは足りない』と主張していたので、十勝全体としてはまだまだ不足していたのでしょう。

連携システム構築への始まり

村上院長が赴任して程なく経った頃、足寄町の医療と介護・保健・福祉の現状についてじっくりと話す機会がありました。村上院長は『北海道医療対策協議会から限られた期間の派遣だけれども、足寄町としてしっかり医療や介護のことを考えていくなら、派遣期間以上に長く足寄町で働いても良い』と言ってくれました。これが連携システム構築に向けての始まりでした。

我妻病院は新型老健に

足寄町には国保病院と我妻病院、しんどう医院があります。介護療養病床を全廃するという話がある一方で、介護療養病床を持つ我妻病院はどのように舵取りしていくのか注目していました。そういう中で、医療機関の役割分担の話が持ち上がって、我妻病院は新型老健に転換していくという決断をしていただきました。国保病院で慢性期入院している患者さんは新型老健へ、一般の患者さんは国保病院へという大枠の中で平成24年の4月スタートを目指しています。

何でも相談できるところを

私の父親が認知症で、ある病院から退院するときに『次の行き先を探してください』と言われたことを思い出します。当時の私は知識もなにもないし、徘徊する老人を受け入れてくれる施設がどこにあるかも判りませんでした。だから《何でも相談所》のようなところが本当に必要だと思っています。相談されたら、すぐに自宅に訪問するくらいのフットワークが大切です。それで病院や老人保健施設、グループホーム、特別養護老人ホームやケアハウスを含めて様々な情報を集中させて、その状態に合わせて一ヵ所で相談を受け循環できるように調整するソーシャルワークセンター(仮称)をつくることで、家族はとても助かると思います。

バランスがとれた両面の支援づくり

これから介護が必要な人が増えていきますが、単に入所施設を作っていけばいいというものではないと思います。厚生労働省が示しているように在宅介護を続けていけるような支援体制が必要です。特に、高齢者複合住宅は在宅療養を支えていく上で必要でしょう。一時的に入居し、いつか自分の家で過ごすという考え方です。そういった高齢者複合住宅に医師や看護師、介護士、リハビリが出向いて行けば安心できると思います。一方で在宅療養が難しい状況の人や独居の人もいるので、そういった人々のためには、グループホームとか小規模多機能型居宅介護施設等を作る必要性はあると思います。在宅介護と施設介護のバランスがとれた両面の支援づくりが必要でしょう。在宅療養を中心としたこのようなシステムづくりに見合った財政出動も必要になってくると思います。

どう生きがいづくりをするか

介護予防をどうするかですね。引きこもらずに、老人クラブとかにどんどん出て行っていろいろな人と接していけば、いい意味での緊張感が出てくるし、PPK(ピンピンコロリ)ですね。お年寄りの葉っぱ産業で有名になった徳島県の上勝町からは、高齢になっても生きがいができると寝たきりが激減して、特別養護老人ホームも無くなったという話も聞こえてきます。生きがいや趣味の世界でお年寄りを活用した産業を考えましょう。お年寄りはいろいろ経験と知恵をもっているので、どう生きがいづくりをするかにかかっていると思います。

広報広聴活動をしっかりやりたい

今の足寄町立特別養護老人ホームはいい介護をしているね。そのきっかけは、アドバイザーの先生から「ハイこれから入浴、これから食事、これから何とか...っていうのは本来の介護ではないでしょう」と言われたことが発端です。当時の施設長がスタッフに「そこまで言われて悔しくないか」と言って、そこでグループケアを始めました。それ以降、外部の専門家の方々から非常に高い評価を受けているのも事実です。認知症の方のためのかえるネットワークもいち早くやっているし、子育て支援も先進的な取り組みをしているし。町民にそういった実際を伝えていく責任があると思う。そんなこともあって、広報広聴活動をしっかりやっていきたいと思います。

有識者の意見を伺いながら

今回の連携システムなど、住民のみなさんと特に密接な施策を実行する場合、その内容や進み具合等をお伝えしているつもりですが、実際は伝わっていないこともあると思います。そういう場合には、有識者の方々に状況をお伝えして意見を聞かせていただくというやり方をしていこうと思っています。例えば、ソーシャルワークセンター(仮称)の在り方や高齢者複合住宅、小規模多機能型居宅介護施設等についても、町はいいと思っていても意見を伺うことが必要だと思います。

やり方を変えてみよう

役場組織は町民のためにあります。職員一人ひとり自分は何をしなければならないのか、何ができるのかを考え続けること。課題は、職員がどのような問題意識を持って仕事をするかということです。従来通りの仕事をそのままやっていればつつがなく過ごせます。それが住民のニーズに応えているかというとそれは決してそんなことにはならないでしょう。時代も町もどんどん変わる中で、旧態依然のやり方では追いつきません。ちょっとそぐわないと感じれば、やり方を変えてみようかと思うだけで相当変わると思います。

一人の能力なんてたかが知れている

福祉政策でいえば、出生数、高齢化率、要介護率など足寄町の実体はどんどん変化しているし、それを踏まえて何をするのかだと思います。特に福祉政策はこれで完璧というものはないでしょう。それぞれの担当者の頑張りによって、様々な人脈ができあがってきました。それを基礎にして、政策などの提案がどんどん出てきたから一定の高い評価をされるのだと思います。私は、いろいろな政策案が現場から上がってきて、みんなで議論をしていく中でやっていきたいと思っています。一人の能力なんてどんなに優れた人がいてもたかが知れているものです。すごく良い考えを持っている人、同調する人、反対する人いろいろだけど、そういった考えを集めていけばより優れた知恵が生まれてくると思います。

人工透析の必要な患者さんは増えていく

残念なことだけれど、人工透析の必要な患者さんは増えていくのではないかと村上院長は言っています。今は隣町の国保病院に20名ほどの患者さんがお世話になっているのが現状です。通院バスの補助もやっていますが、年齢と共にだんだん通院も大変になってくると思います。この連携システムの中で国保病院は医療の中核になっていくわけですから、機能強化のひとつとして人工透析はやるべきだと思っています。そのような治療だけでなく、健診や保健指導など予防医療の強化も重要だと思っています。

町民自らが医師との信頼関係を

足寄町から病院が無くなったら安心して生活できる町づくりには程遠いと思います。そのためには、町民自らが医師との信頼関係をいかに築くかだと思います。地元の医療機関でまず診てもらう。そして更に高度な医療が必要なら紹介状を書いてもらう。地域医療で大事なのは、足寄町は地域が広いからこそ、医師も看護師もリハビリも出かけていきますよという姿勢を大事にしたいですね。だから在宅を基本にして高齢者複合住宅の活用はきわめて重要です。開拓の町だし、住民の事情もあるので、冬だけでも町に来て住んで欲しいと言っても、なかなか承知しない心情も理解できるし、いかに知恵を絞り出すかですね。納得のいく政策をもって誘導する責任が私達にあると思っています。

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